「365日持ち歩く」コンシールドキャリー SIG P365 が人気の理由とは?
ここ数年、MCXやMPX、P320などアメリカ軍での採用が続き、絶好調のSIG SAUER(シグ・ザウエル)。しかし、それらの軍納入モデル以外にも大成功を収めているモデルがあります。それが、これからご紹介するハンドガン P365 です!
P365は、P320と同じくFCU(ファイアコントロールユニット)がフレームから丸ごと取り外せるなど、モジュール性能を備えたハンドガンです。しかしP320と決定的に異なるのは、モデル名に込められた「365日持ち歩く」というコンセプトから分かる通り、コンシールドキャリーにカテゴライズされている点です。
コンシールドキャリー用に設計されたサブコンパクト ピストルは、これまでにも各メーカーから多くのモデルが製造されてきました。当然ながら P365 のキャリーガンというコンセプトも特別珍しい訳ではありません。
それでもP365は、販売を開始した2018年とその翌年の2019年でそれぞれ全米で最も売れたピストルとなり、NRA(全米ライフル協会)の機関誌「Shooting Illustrated」をはじめ、「GUNS & AMMO」など著名な雑誌からハンドガン・オブ・ザ・イヤー等に選出されることもしばしば。その人気の理由は一体何なのでしょうか。
目次
SIG P365 が誕生した訳
P365 人気の理由
・コンシールドキャリーでは多めの装弾数
・P320より高い信頼性
・豊富なバリエーション
他メーカーによるP365コンプリート
・RADIAN WEAPONS / THE 365 EVOLVED
・Strike Industries / Strike P365
・WILSON COMBAT / WCP365
・PMM / Micro Barrel & Compensator Combo
まとめ
ORGA AIRSOFTでは SIG P365 をモデルアップしたガスブローバック・エアガンも取り扱いがございます。記事を読んでご興味が沸いた方は是非チェックしてみてください。記事の後半でSIG以外のメーカーによるコンプリートモデルなども取り上げていますが、関連したエアガン製品についても紹介しています。
SIG P365 が誕生した訳
冒頭で少し触れましたが、P365はモジュラーピストルであることが特長の1つです。P320も同様であるため派生モデルの様にも思えますが、実際は全然異なるモデルです。まずはP365の誕生の理由からお話ししましょう。
SIG SAUER P365 OPTIC READY 出典:GUNS.COM
P365の先輩にあたるP320は、モジュラーピストルである特性を活かし数えきれないほど多くのモデル展開をしています。アメリカ軍に制式採用されたフルサイズのM17、コンパクトサイズのM18だけでなく、XCARRYというキャリーモデルもちゃんと用意されていたのです。
P365が発表された当時もP320の売れ行きは好調でしたし、キャリーモデルがあるならわざわざ新モデルを作る必要は無かったはずです。では何故P365が作られたのか。実は、P320をキャリーモデルにするには少々難点があったのです。
SIG SAUER P320 XCARRY 出典:GUNS.COM
P320は今や廃版となってしまったP250をベースに開発されました。P250もモジュラーシステムを持っていますが、P320と大きく異なるのはハンマー式であること。ハンマースパーもなければデコッキングレバーもなく、ダブルアクションのみであるなど、GLOCKに対抗意識を燃やしたシンプル・イズ・ベストな設計が特徴でした。
これを更に現代の主流なストライカー方式に変えたのがP320というワケ。そのためP250とP320は共通する部品も多く、その名の通りモジュールピストルだったのです。
ところがそのモジュール性能が仇となり、ストライカー式としては少々大型の内部ユニットになるため銃身の位置が高いのがネック。ボアアクシス(Bore Axis)と呼ばれるグリップと銃身の高低差が大きいと、射撃時の反動を抑えづらくなってしまうのです。射手のストレスも大きくなります。フルサイズやコンパクトであればそんなに問題ではありませんでしたが、サブコンパクトやキャリーサイズまで小さくなるとこれが顕著で扱いづらいという弱点があったのです。
P320が成功しSIG SAUERが注目を集めている今こそ、全カテゴリーでその名を轟かせたいところ。P365の設計思想自体はP320と近い部分はありますが、キャリーモデルが念頭にあるためFCUやフレームを薄く設計し、P320の弱点を補うべく誕生したのが P365 になります。
P365 人気の理由
コンシールドキャリーでは多めの装弾数
SIG P365 は始めにマガジンを設計し、それに合わせてグリップモジュールやFCUを設計する大胆な設計手法が取られました。結果として、同じサイズ感で同じ装弾数(10発)のGLOCK G26と比較しても、グリップが4mm程度薄くなっています。
G26は 9×19mmパラベラム弾を使用するフルサイズと同じグリップ幅のまま小型化したのに対し、P365は独自の設計で2桁の装弾数を実現しているのです。しかも、標準グリップに納まる最も短いマガジンのままでです。シングルカラム化して薄型化したG43は装弾数6発となり、やはりP365には敵いません。
この装弾数10発という数字はなかなか驚異的で、グロック以外のメーカーとなると10発装弾を実現しているコンシールドキャリーはほとんどありません。9×19mmより小径な.380ACP弾のキャリーガンですら1桁台に留まります。
ちなみに、P365は標準モデル用の最小のマガジンで10発装弾ですが、拡張マガジンにより12発、15発、17発まで拡張可能。モデルによってはロングマガジンで21発、25発にも対応します。フルサイズ同等またはそれ以上のキャパシティも備えることができます。
コンシールドキャリーはいざというとき身を守るための物で、むやみに連射する銃ではありません。本来ならば少ない装弾数でも問題はありませんが……でもやっぱり、同じサイズで装弾数が多いに越したことはありませんよね。
P365はフルサイズ同様の強力な9×19mm弾が使用でき、装弾数も多いという点で非常にアドバンテージの大きいハンドガンなのです。
P320より高い信頼性
P365とP320は設計が異なると前述しましたが、皮肉なことにそれがP365の株を上げる一因にもなっている様です。フルサイズのP320は米軍にも制式採用されたことも手伝って、現在でも売れに売れているハンドガンではあります。しかし発売当初から様々なトラブルに見舞われており暴発の危険性も示唆されていました。
これを受けてSIG SAUERはP320の改修等を行っていますが、本当に危険な設計なのか、あまりにも売れたから一部の不具合にクローズアップされてしまったのか、その真偽は確かではありません。また信憑性はありませんが、生産数が非常に多いためトラブルも必然的に多くなるし、事故率で言えば他の銃と大差ないという意見さえあります。ただし、所有者に落ち度のない暴発により負傷したり死亡したと認定された事故が起きていることは事実で、大きなイメージダウンを招いています。
通常こういった状況になるとユーザーはSIG以外のメーカーに流れそうなものですが、P365はP320とは設計が異なることが明らかであったため、P320の人気を上手く引き継げた様に思われます。
実際のところ、P365は初期モデルでファイアリングピンの不具合などはあっても、設計に起因する暴発事故は起こしておらず、売れ行きとトラブルの比率でも高い安全性を示す結果となりました。既存P365ユーザーの後押しもあってP320による悪影響は及ばず、今ではフラッグシップモデルの座をP320から奪っています。
ただ興味深いことに、P320は全く売れなくなったかというと依然として人気は高く、使用を禁止する機関もあれば新たに導入を決める警察署があったりと、プロの現場ですら意見が真っ二つに割れています。P320については今後の動向が気になるところです。
豊富なバリエーション
モジュール性能を活かして、細かく仕様を変えたバリエーションモデルが豊富に存在することもP365の人気の一因と言えるでしょう。コンシールドキャリーとしてスタートしたP365ですが、現在では不安のぬぐい切れないP320(SIG SAUERは認めていませんがw)に代わる勢いでフルサイズモデルやコンペンセイターモデル、他メーカーによるカスタムモデルまで登場し、SIG SAUERピストルの顔として存在感を強めています。
P320の実績にはまだ敵いませんし、採用された法執行機関でもバックアップガンとしての採用が目立ちはしますが、今後はキャリーピストルとして以上の活躍も期待されます。
P365は2025年現在、初期モデルにフラットトリガーやビーバーテイルを追加しグリップを若干延長したP365Xが標準モデルとなっており、装弾数も12発に拡大。デフォルトでオプティクスレディーも備えています。P365Xから更にスライドとバレルを延長したXLや、グリップも伸ばしてほぼフルサイズとなるXMACROも存在。バリエーションの充実っぷりはフラッグシップモデルと呼ぶに相応しいものとなっています。
他メーカーによるP365コンプリート
人気の高いハンドガンには、パーツメーカーやビルダーによるコンプリートモデルやカスタムモデルも付随して多くなる傾向にあります。P365ももちろん各メーカーが目を付けており、オリジナルとは違ったカッコ良さを魅せてくれます。ここからはその一例をご紹介しましょう。
RADIAN WEAPONS / P365 EVOLVED
コンプリートモデルではありませんが、RADIAN WEAPONSが魅力的なP365パーツをリリースしています。メインとなるのはAFTERBURNERと名付けられたコンペンセイターで、大胆な上方排気によりリコイルを軽減。組み合わせるRAMJETバレルはコンペンセイターに合わせたカットを入れつつ、RADIAN独自のRadianiteコーティングで耐腐食性や耐久性をアップ。
バックストラップとセットになったマグウェルも非常にインパクトのあるデザインですが、背面と底面からグリップ力を高める合理的な設計でもあり、実用性はなかなかのもの。
その他、マガジンのフロアプレートやリコイルスプリングガイド(外から見えませんが)など、RADIAN製パーツを全て組み込むとP365 EVOLVEDの完成!
このRADIAN WEAPONS P365 EVOLVEDのうち、AFTERBURNERとRAMJETを再現したP365 ガスブローバックがPara Bellumからリリースされています。
しかもカッコ良いことに、長いXMACROフレームに短いP365Xスライドを組み合わせ、コンペンセイターで差分を埋める憧れスタイルが箱出しで堪能できてしまいます。
SIG製造の現行COMPモデルはスライドに直接ガス排出口が設けられているので、このスタイルはRADIAN独自のものとなります。この雰囲気、最高ですね~。
RAMJETバレルはチャンバーポートが大きく抉られつつ、カラーリングもブロンズとなりインパクトは絶大!この手のモデルはスライドストップした姿も非常に絵になります。
AFTERBURNERコンペンセイターもリアルに作り込まれているので、メカニカルなディテールがお好きな方には堪らないガスブロハンドガンとなっています。
Para Bellum P365X-COMP ガスブローバック ハンドガン 商品ページ
Para Bellum P365 22連スペアマガジン 商品ページ
Strike Industries / Strike P365
エアソフト界でも非常にファンが多いStrike IndustriesもP365のパーツをリリース。Strike P365としてコンプリート化も可能になっています。SIらしい近未来デザインとP365のマッチング、意外と悪くないですね。
コンシールドキャリーですし、SIGでは一時期SAS(SIG Anti-Snag)なる引っ掛かりを排除したモデル(ジョン・ウィック4でケインが使用)もリリースしていたほど、本来ならば抜き差しを優先すべきとは思いますが、SIでは逆行。むしろ、スライド後端にはチャージングハンドル(ちょっとした出っ張り程度ですが)を取り付けられる様にし、コッキングやチャンバーチェックをしやすい様に深々としたセレーションも設けられています。
このSI Strike P365も、EMG Internationalによりストライク・インダストリーズ正式ライセンスにてガスブロがリリースされています。軽量化のポートカットもバッチリ再現!
サバゲーやシューティングとなるとフルサイズかコンパクトのガスブロを使うプレイヤーさんが多いとは思いますが、キャリータイプの細いグリップは手の馴染みが半端ないですね…撃ちやすっ!しかもSIモデルはマグバンパーによりグリップが延長されるので、手が大き目の方でも問題なくグリップできると思います。インサイドホルスター欲しくなっちゃうなw
EMG / VFC SI SMP P365 GBB ガスブロ ハンドガン Strike Industries Licensed 商品ページ
EMG / VFC SI SMP P365 GBB スペアマガジン Strike Industries Licensed 商品ページ
WILSON COMBAT / WCP365
実用性重視で硬派なイメージのWILSON COMBAT(ウィルソン・コンバット)もP365のカスタムを手掛けています。お得意のX-Tacパターン・コッキングセレーションが滅茶苦茶カッコ良い!直線的なカットが際立つ面取りのデザインも最高です。
標準でクロモリ製バレルになるほか、モデルによりトリガー周りのカスタム有無も選択も可能。サイズ、トリガーカスタム、オプティクスレディーの違いで12パターンものモデルを用意しています。コンシールドキャリーなのに、溢れ出るプロ感が凄い…。
残念ながら、こちらのモデルはまだエアソフトガンとしてはモデルアップされていません。非常に魅力的なので、どこかのメーカーさん、製品化を是非お願いします…。
PMM / Micro Barrel & Compensator Combo
割と真面目にタクトレやってるように見えて、製品名にさらっと下ネタ混ぜてくるPMM(Parker Mountain Machine)は、バレルとコンペンセイターのコンボ製品をリリース。グロックやワルサーのコンペンセイターで知名度のあるPMMですが、P320やP365についてもカスタムを手掛けている様です。シンプルですが、これはこれで別のカッコ良さがあります。
何やら見慣れぬフレームが気になりますが、これはMischief Machineのメタルグリップモジュール。ポリマーフレームをメタル化して重量バランスを整え、リコイルを軽減してくれるそう。Mischief MachineはP365のカスタムスライドも製作していますが、もはやコンシールドキャリーという括りでは収まらないアップグレード感。かなりマイナーな気もするんですが、PMMとのコラボで今後表舞台に出てくるのか?!
こちらもエアソフトパーツとしてはまだリリースされていません。P365自体がガスブロとしてはモデルアップが少ないので、エアソフトパーツの展開は今後に期待するしかありません。PMMは最近注目株で、P320やグロック用アウターバレルはレプリカが徐々に登場しています。EMGあたりがライセンス取ってくれるとありがたいのですが。
まとめ
さて、現在でもアメリカの銃市場で衰えぬ人気を見せるコンシールドキャリーP365について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
P365はこれまでにない優れたコンシールドキャリーであると評価され、それこそが人気が衰えない最大の理由でしょう。しかし、高性能且つ大衆向けの銃がMADE IN USAで誕生したことも、市場を煽る結果に繋がったのかもしれません。
SIGは元々スイス発でありながら、アメリカ合衆国の企業「SIG SAUER」として定着するまで紆余曲折ありました。それにも拘わらず、20世紀後半から続くヨーロッパ勢に押され気味の銃市場を一気にアメリカに戻さんとする強さを市場も感じ取ったのかもしれません。ちょっと美化しすぎ?筆者の勝手な妄想ですw
そんな話はさておき、P320一辺倒なエアソフト製品においても、P365の数少ない2製品のインパクトは中々のものです。日本人の手に良く馴染むコンパクトさ。軽快なブローバック。様々なモデル展開を期待させる豊富なバリエーション。ご興味のある方は、是非一度手に取って頂きたいガスブロです。
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